■ リストラなしの「年輪経営」(伊那食品会長)

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 「リストラなしの『年輪経営』
  ~いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長~

 著者:塚越 寛(伊那食品工業株式会社 代表取締役会長)
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 創業48年間、増収増益で多くのマスコミにも取り上げられる、「伊那食品工業」を創業半年後から育ててきた塚越会長の著書である。

 塚越氏は高校2年生の時に肺結核を患い、高校を中退して3年間療養したそうです。
その後に就職した木材会社から21才で、創業半年の赤字会社、「伊那食品工業」に社長代行として派遣される。

 そして、生き抜くために必死で働き、25年を過ぎたころに少し余裕が出てきて、「会社とは何のためにあるのか?」「会社にとって、成長とは何か?」と考えるようになったそうです。

 長い間考え続けた末にたどり着いたのは「会社は、社員を幸せにするためにある。そのことを通じて、「いい会社」を作り、地域や社会に貢献する。」それを実現するために「会社が永続する」ことが一番重要だと考えたそうです。

 ここから得た結論が「年輪経営」のようです。
 この意図するところは、「急成長を目指すより、毎年少しずつ成長する」会社を目指す。
 急成長は必ずひずみをもたらし、かえってマイナスになるというものです。

 そして、この信念をもって伊那食品工業を経営した結果、「48年間、増収増益」に繋がったようです。
 (48年目に健康食品として、寒天がテレビで取り上げられ、「寒天ブーム」が訪れて、一時的に売り上げが急増し、増収増益の記録が途絶えたようです。)

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 以下、この本の目次を元に塚越会長経営理念抜粋してみました。

 ・「良い会社」ではなく「いい会社」を目指そう。
  「良い会社」とは株式市場で評価されようと、売上、利益、時価総額などの数字を追いかける会社で、社員や取引先が幸せを感じない。
  「いい会社」は社員、取引先、消費者、地域の人に「いい会社だね!」っと言ってもらえるような会社である。

 ・経営とは「遠きをはかる」こと
  企業の永続にはアメリカ型の四半期決算に合わせた短期経営ではなく、「遠きをはかる」中長期の経営戦略が重要である。   

 ・急成長は敵、目指すべきは「年輪経営」
  いい時も悪い時も無理をせず、低成長を志して、自然体の経営に徹するのが「年輪経営」。「身の丈に合わない、急成長は後々つまずきの元になる」というのが塚越会長の信念。

 ・人の犠牲の上にたった利益は、利益ではない。
  利益をあげるのは当然だが、利益をあげることを目的にすると「いい会社」から離れてしまう。
  社員や仕入先の犠牲の上にたった利益は利益ではない。「売り手」と「買い手」は対等で適正な価格での取り引きが大事。

 ・利益それ自体には価値はない、どう使うかが大事。
  伊那食品は利益を「社員の幸せを増やすため」と地域社会への貢献に使うようにしているようです。

 ・人件費はコストではなく、会社の目的そのものである。
  バブル崩壊以後、日本の企業はリストラに走り、結果として不況が益々深刻になりました。
  塚越会長は本来、会社を始めた時にみんなで一生懸命働いて、より多くの報酬を得て幸せになろう、と会社を始めたはずなので、「人件費を減らして会社の利益を増やしても意味がない」といいます。

 ・安いからといって、仕入先を変えない。
  「継続」を重視。仕入先に無理な値引きを要求せずに信頼関係を築くことで、お互いの共存共栄を願う。

 ・信頼関係は契約書より大切。
  ただ、親しいだけの信頼関係ではなく、商売や経営の理念を共有していることが本当の信頼関係に繋がり、契約書よりも固い絆になるとのこと。

 ・身の丈に合わない商売はしない。
  無理をして大手スーパーなど特定の流通チャンネルで大量に売るよりも、様々な商品を開発し、生産拠点と販売チャンネルを多様化することで、バランスの取れた経営を実現する。
 
 ・たくさん売るより、きちんと売る。  
  安易な薄利多売はしないということ。きちんと適正な利益を確保してこそ将来の発展がある。
  ところが、現在の日本は安値競争でメーカーも問屋も小売もみんな喘いでいると塚越会長は嘆いています。
 
 ・利益の源は新製品で市場を創造し、シェアを高くすること。
  寒天テングサオゴノリを煮詰め固めた単純製品ですが、寒天を使った新しいお菓子を開発、提案することで「開発研究」型の企業として発展してきた。
  寒天という商品の用途を「深耕」し、新しい商品を開発することで自ら市場を作り出し、無益な価格競争を避ける。

 ・性善説に基づくと経営コストは安くなる。 
  性悪説に基づくと社員や取引先を規則で縛ったり、評価したりと管理しなくてはなりません。
  性善説に基づいた経営をやれば、管理やチェックの手間が省けコストが安くなります。
  但し、性善説に基づく経営が実現できるには社員が「正しい心」を持つような教育が必要とのこと。

 以上はこの本の内容の一部を要約したものです。

 塚越会長はこの本の前に「いい会社をつくりましょう」という本を出しており、私は4~5年前に買って読みました。今でも本棚にありますが、内容的には大体同じ感じです。
 当時はまだ、「年輪経営」という言葉は使っていませんでした。

 因みに伊那食品工業の「社是」「いい会社をつくましょう。 ~たくましく そして やさしく~」です。
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 また、トヨタ自動車の豊田章男社長も「年輪経営」という理念に共感し、社内の講演に塚越会長を招いているようです。
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 興味のある方は「amazon」で買って、是非一読下さい。
 (amazonの中古本なら安いですよ。)(笑)

 中小企業の経営者には一読の価値があると思います。

 (おわり)

 

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